主宰俳句

「雉」誌より 田島 和生 主宰 の俳句をお届けいたします。

 毎号、巻頭に主宰俳句が掲載されます。最近の作品をまとめました。

田島 和生 主宰俳句

令和2年 10月

高嶺風

貝風鈴鳴りゐて大き高嶺風
奥能登の貝風鈴のさんざめき
夜明より蟬の高鳴き飯噴けり
酢に締る加賀の秋鯖青光り
書斎までコーヒー匂ふ今朝の秋
朝顔の空へ空へと次々と
稿終へて秋の夕映まのあたり
海原の紺を背筋に秋刀魚鮨

令和2年 9月

夜の秋

大夏木小鳥の羽毛舞ひにけり
さながらに天女のまつげ合歓ひらき
捩花のねぢれへ夕日とびにけり
大琵琶の花火とまがふ雷一つ
雷鳴の昨日は過ぎて鳶のこゑ
いづくより来しかあめんぼ水溜り
亡き人の本黴くさき懐かしき
ひんやりと椅子の背もたれ夜の秋

令和2年 8月

片白草

浜風へ片白草の手旗めき
橋の根に釣の少年行々子
ころがつて集へる田螺子沢山
巣燕に小暗き納屋の土匂ふ
百日紅小蟻走つて上り下り
鵜の一羽入日をよぎりまつしぐら
瀬に立ちて鷺の漁(すなど)る合歓の花
合歓の花咲いて父の忌近くなり

 

令和2年 7月号

男 比 良

五月来る稜線さやに男比良
聖五月小鳥さながら蝶高し
孟宗のくろがねの皮脱ぎ払ふ
足長蜂かりかり垣の竹嚙めり
みどり児を負うてをみなや小鮎釣
上り鮎たまゆら山の日を返し
本買ひに疫病(えやみ)の町へ大マスク
手を洗ひうがひマスクの五月忌(さつきいみ)

令和2年 6月号

コロナ禍

コロナ禍の街へ春雷割れにけり
春愁の瞼重たくマスクして
防疫のマスク二重に春菜買ふ
疫病(えやみ)の世ぽたぽた散りて八重桜
桜蘂降つて砂場に子ら見えず
チューリップ散つて影失()す石畳
    悼 紺井てい子さん
白牡丹ゆれゐし君の一生(ひとよ)なる
遥かなるものへ匂へり夕牡丹